#私の挑戦史

「ママの固定観念」を変える。

尾嶋芳子、通称「おじまま」。WEINママ部隊の代表にして、小2男子の母親でもある。 ママ部隊からWEIN隊を盛り上げるそのリーダーシップの強さは誰もが知るところである。そんな「おじまま」の強さの源泉は、どこにあるのだろうか。WEIN隊の学生部隊リーダーの石坂が、一人の大学生として率直に疑問をぶつける形で取材を行った。 先を見据えた眼差しの強さと、一人の人間としての優しさ。そこには、誰よりも挑戦を繰り返し壁を乗り越え打ち破ってきた、「おじまま」の知られざるストーリーが隠されていた。

2020.08.18
「ママの固定観念」を変える。

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Profile

尾嶋 芳子(おじま よしこ)

子どものエデュテイメント体験プロデューサー

出身地:神奈川県
学歴:上智大学文学部英文学科 中退
趣味:子どもとお出かけ、鬼滅の刃のモノマネ
活動:コロナ禍で奪われたこどもの「体験価値」を取り戻すをビジョンとして新規事業挑戦中。特にこどものエデュテイメント、観光体験企画開発の領域で、活動の幅を広げている。

地域情報誌で4年連続80名中売上1位を達成。出産後株式会社ファインドスター初のワーママ社員となる。営業マネージャーとして従事した後、お出かけ情報メディアで3年間新規事業企画を担当。現在はフリーランス。8月よりWEIN隊ママ部隊の初代リーダーに就任。小2男子の母。2020年8月よりWEIN隊ママ部隊の初代リーダーに就任。

なぜWEIN隊に入ったのか?

小学校2年生のお子さんを育てながら、子育て体験プロデューサーとして活躍されています。非常にお忙しい日々を過ごされていると思うのですが、なぜWEIN隊に入ろうと考えたのでしょうか。

「挑戦者でいつづけること」が人生のビジョンだからですね。またそれを「誰とやるか?」が大事だと考え、WEINのように夢や志が社会に向いている方々となら、面白いことが絶対できるって思って。

「誰とやるか?」を意識したのは、時代や業界を超えて共通する『飛躍の法則』をまとめた名著「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則」にある、「バスの理論」に触れた時です。

7年前に亡くなった父の遺言が心にすとんと落ちた瞬間でした。

父は、私に「成功した時が頂点ではない。世界を自分達が変えると心底思い込み、どでかい夢を描いて同士と寝食忘れて語り、ガムシャラに挑戦していた日々そのものが人生で最上の幸せだった」と語ってくれました。つまり、成功するかどうか以上に、誰と挑戦するか?が自分が目指す幸せなんだと。だから、私はその仲間を増やしたかった。

また、コロナ禍になって、リモートになって、人と分断されていく危機を感じて。未知を模索するど真ん中で、最先端の挑戦者のつながりに飢えていた時に、溝口さんのポストでWEIN隊を知りました。応募期間ギリギリ3時間前とかに勢いのまま書き綴って応募した気がします。笑

ママ部隊ではありますが、パパもあってもいいし、男性も関係なく集結できる場にしたい。いろんな野望をいただいています。笑

〜お宮参りでお父様とご家族と〜

0→1は孤独

お父さんの「誰と一緒に」挑戦ができるか、それが大切だとおじままさんが繰り返しおっしゃっていた言葉が心に刺ささります。就職されてから、0から1を生み出す経験を大切にされているとお伺いしましたが、こちらも何かきっかけがあったんですか。

最初に入社した会社で新規営業を任されました。その後転職した会社では、徐々に新規事業企画の機会を頂くことができました。現在も目下0→1領域で、「withコロナ時代だからこその子どもの体験事業」の立ち上げを挑戦させて頂いています。一方で0→1というのは孤独だなと思っていて。会社の売上を支えて下さっている部門や、1→10で成長しているチームの横にいると、「ワケわかんないことやってると思われているんだろうな」と沈んだ気分になることもよくありました。最初は10事業作って1、2個でも形になればいい方ですし、求められる評価基準も違う。必然的に傍流になりやすいんです。過去前職の花形部署で月1千万以上の売上を達成していたからこそ、主流部門側の気持ちも痛いほどわかるので、余計苦しい。

執着の原点

0から1を生み出す苦しみを経験されているのは強いなと感じます。おじままさんは「現場」にこだわっていると感じます。なぜ、「現場」なのでしょうか?

私の仕事の原点だからです。特に出産直後は営業という現場前線に居続けたいという想いがありました。

憧れだった上智大学に入ったものの留年した上に中退と当時は奈落の底に落ちた気持ちだったときに、このこびりついたコンプレックスを溶解したくて、カッコいいキャリアウーマンになるんだ!と当時成長ベンチャーだった地域情報誌に営業として飛び込みました。夜中まで働いてがむしゃらに成果を出して。岡島悦子さんが提唱される「チャック女子(一見女子なんだけど後ろにチャックがついていて、下ろしたら中からおじさんがでてくると思われるほど猛烈に働く女性のこと)」という言葉があるんですが、まさに典型で。笑 朝まで働いて、談笑して、話す内容も体育会系男子のような言葉を使ってました。つまらないプライドだと思うんですが、こじらせたコンプレックスを解消するべく自分の力でスタートラインを取り戻すことが大切でした。

〜おじままさんが、地域情報誌企業のトップ営業としてスタートラインを取り戻した頃〜

築いてきたキャリアが崩れていく恐怖

仕事に一心に打ち込むおじままさんが浮かびます。就職して、順調にキャリアを歩みはじめたところで、また新たな壁がでてきたと。

ようやく、自分を取り戻す自信が芽生えたころに、ちょうど出産が重なりました。出産というライフイベントでキャリアが崩れることがとても怖かった。

出産後、当時勤めていた企業の復帰面談でサポート職を提案され、戦力外通告を受けたような気持ちになりました。盤石に積み上げたつもりのブロックがガラガラと崩れていくような光景。その足で転職エージェントに会いに行って、当時急成長していたベンチャー企業、株式会社ファインドスターにワーキングマザー1号として迎え入れて頂きました。「時間あたりの生産性で勝負します」、「私が女性の社員の方々の開拓者になります」とかドヤったんですが心の中では「えっと、どうやってやるのそれ?」と不安でいっぱいでしたね。

育児とキャリアの両立とは?

お子様を授かって、また新しいキャリアを歩まれてからのご自身の生活はどのようなものになったのでしょうか?

颯爽と定時で帰りますと言ったものの、子どもが小さい頃のワンオペ育児は無理ゲーでしたね。夫婦関係をちゃんと構築しないと厳しかったです。特に2歳以降になると、子どもの安全確保段階から、よりコミュニケーションが大事になってきます。営業のマネジメントもさせて頂いていたんですが、時間や場所の制約がある中で、なかなか他のマネージャーと同じ土俵にはあがれなかった気がします。それは一見些細なことなんですが、チームメンバーと向き合う時間がとれなかったり、お客様との会食に行けず商談機会を逃したり、夜家で仕事をしていても子どもが嫉妬してオレンジジュースをPCにこぼそうとする…あらゆる面で申し訳ないという罪悪感が蓄積していきました。

世間が定義する「いい母親」になれなくてもいい。自分の選んだ道は自分で正解にしていけばいい。

それは状況としては仕方がないこととはいえ、かなりもどかしい思いを抱えていたのではないでしょうか。

そうですね。でも、自分は母親になったのであればそもそも他の人と同じ土俵で比較するのをやめて、子育ての経験自体を価値に転換して、成果を発揮できる形を模索しようと、発想を変えました。ワークとライフがシナジーするという、スパイラルを起こすイメージ。子育てが仕事の邪魔にならない、むしろプラスのインプットの場として捉えられると精神的に全然違うと思えるようになりました。世間が定義する「いい母親」になれなくてもいい。自分の選んだ道は自分で正解にしていけばいい。私の子育ては、「挑戦する背中を息子に伝えること」。自分の母親にも、夫にも、義理の両親にも、私は働くのが好きなんだ、と伝えました。おかげさまで、周囲の支えで、なんとかやれています。家事は大してできませんし、手作りおやつも作れません。

〜ファインドスターではワーキングマザー1号目として入社〜

同調圧力に苦しむ若者へのメッセージ

固定観念的な「母親像」に対して、新たな母親像を自ら再定義してきたんですね。僕、尊敬しかないです。同様に、SNSや学校生活を通して「学生はこうあるべき」といった強迫観念に晒されている学生に対して、おじままさんからメッセージをいただきたいです。

「ストレングスファインダー」とか色々と自己分析ツールがあるので「自分の強みを知ること」が大切かもしれません。例えば、私は「コミュニケーション」「社交性」「着想」のスコアが高かったんですが、「協調性」は全くといっていいほどないと診断されました。笑 人は大好きで、話すのも人の話を聞くのも好きだけど、人に合わせることはそもそも遺伝子レベルで向いてない。自分が向いていないことは、人に公言していくといいんじゃないかな。自分の強み、弱みを理解することから始めて、生きづらさをなくしていければ、と思います。

素直に自分をさらけ出すには?

先程の質問とも重複しますが、素直に自分をさらけ出すために意識していることはありますか。

意識しているというか、恥ずかしいことはもう何もないです。それよりもコトを成し遂げたい。そのためには、WEINママ部隊のビジョンの達成の責任がある私が、リーダーに立候補させて頂いた理由や実現したいことを伝えるには、原点から自己開示をして共感や信頼を集める必要があるんです。ママ部隊というネーミングもモヤモヤと違和感がある人いますよね。パパもあってもいいし、男性も関係なく集結できる場にしたい。この違和感は大事にしたいですね。

ダイバーシティ1号目の危機感

おじままさんのコミュニティ愛が溢れています…。自分をさらけ出す=他者との信頼関係の醸成につながる、そして信頼の醸成こそがビジョンの達成につながるのかもしれません。おじままさんが、自分の意思で決定を繰り返していく強さの源泉はどこにあるのでしょうか?

まだまだ日本は出産したら仕事をやめて子育てに集中する女性が「いい母親」だという呪いがはびこっていると思います。ジェンダーギャップは先進国では最低の121位というデータもあります。自分で選択するのは自由ですが、一方で本人の意志とは別に「選択させられる」のは理不尽だと思いました。

優秀な高校や大学を卒業した同期も結婚や出産をきっかけに会社をやめてキャリアを諦めてしまう人が多く、価値観はそれぞれだけど、当時はすごく不思議だったんです。まさに分断の罠にハマりそうになった時期があって。

だからこそ、いわゆる“バリキャリママ”を掲げて理解できないと壁を作るのではなく、自身がもっと地域社会に飛び込む経験をする必要があると感じて。息子の幼稚園入園の年に思い切って全て仕事を辞めましたね。ウズウズして2ヶ月で転職活動始めちゃいましたけど。笑 息子は保育園ではなく幼稚園に入れたんですが、そこで出会ったママ達はやりがいをもって地域に貢献しているし、子育てに熱心で話題も豊富で、素敵な人ばかり。何よりママという一括りにされるものではなく、多種多様でした。だからこそ、ダイバーシティの1号目とされる女性の社会進出がもっと進めば、特に育児・教育領域で多様な提言機会が増え、社会を前進させるエンジンになると感じます。

ママ部隊というコミュニティについて

ママ部隊の印象についてお聞かせください。

すごい熱量が高い。挑戦したい人も応援したい人もたくさんいます。そんじょそこらのコミュニティじゃない。笑

特に応援したい側の方が、挑戦に触れることで自ら挑戦者になるストーリが生まれてくることが楽しみです。ママ部隊メンバーの熱量を感じるたびに身が引き締まりますね。

ママと一括りにされることに、違和感やモヤモヤを感じる方は多いと思うし私もその1人です。だからこそ、まずはワンチームとなり、社会へ提言の機能を持たせ、女性に閉じず、多様な方々を巻き込む台風の目のような存在にしていきたい。

とにかく今は腹を括り、目の前のことをやるしかないと思っています。

編集後記

はじめに触れられていた、父親とのエピソードの中で「誰と一緒に」挑戦ができるか、それが大切だとおじままさんが繰り返し言っていた言葉が心に刺さりました。自分一人でできる挑戦など存在せず、仲間が増えることに至上の喜びを覚える。仲間のために尽力する彼女の行動の源泉は、経験に裏打ちされた確固たる信念にあると感じます。

なお、インタビュー内では触れられていませんが、復帰面談を提案した当時の会社に今では感謝しているそうです。自分の状況と、会社の状況を鑑みて提案を行ってくれた会社。しかし、「戦力外通告」という言葉にも表れているように、提案が必ずしも「自分の欲していたもの」になるとは限らないのが現実です。自分にとって大切な価値とは何かを正面から向き合って考え抜き、言葉を選びながら熟考するおじままさんの姿からは、自分自身の軸の強さを保ちつつも、他者の立場に立つことで溢れ出る「優しさ」を垣間見ることができました。

また、近年「ワーク・ライフ・シナジー」という言葉が世間を賑わせていますが、ここまでそれを体現できている人は少ないと思います。僕は大学生ですが、日頃の学業と仕事の両立で精一杯であり、ワークと学業をシナジーさせるところまでは考えが至っていないです。彼女のビジョンが強くあるからこそ、自然と体現しているのだと実感しました(僕も早く原稿を書き上げねば、と焦りました)。

インタビューの終盤では「なぜライフイベントによってキャリアが閉ざされなければならないのか」という点について、熱弁を振るわれていたことが強く印象に残りました。当然視されている状況を疑い、それを自らの行動の原動力としているところに、おじままさんの確かな信念が刻まれているようでした。

当たり前を疑い、行動をする。一人だけで行動するのではなく、周りの力も巻き込みながら、自分の持つビジョンへと邁進する。これを読んでくれる人には、僕のような学生や、これからもキャリアを形成していくであろう方々も多いと思いますが、困難に直面した時にはおじままさんの考え方が非常に参考となると思いました。

WEIN隊 学生部隊リーダー・ 石坂 健